17-3. 【実践編】若手人材の定着率を劇的に改善する具体的な施策

前回のセッションでは、中小企業で若手社員が早期離職を選んでしまう「本当の理由」を深掘りしました。期待値ギャップ、成長への不安、評価への不満、人間関係、そして働きがいやエンゲージメントの低下といった要因が、複雑に絡み合っている現状が見えてきたかと思います。

これらの課題を認識できたことは、既に改善への大きな一歩です。しかし、課題を理解するだけでは、若手社員の離職は止まりません。重要なのは、これらの原因に対して、具体的かつ実践的な対策を講じることです。

このセッションでは、中小企業でも取り組みやすく、かつ効果的な若手人材の定着・離職防止のための具体的な施策を、多角的な視点からご紹介します。大企業で成功している事例や、グローバルトレンドも参考にしながら、貴社の状況に合わせてカスタマイズできるヒントを豊富にお届けします。

3-1. 入社後が肝心!「オンボーディング」の効果的な設計と運用

若手社員の早期離職を防ぐ上で、最も重要な期間の一つが入社直後です。この時期に企業への帰属意識を高め、仕事や職場にスムーズに馴染めるようサポートするプロセスを「オンボーディング」と呼びます。単なる入社手続きや初期研修ではなく、新しい環境に慣れ、早期に活躍できるよう支援する包括的な取り組みです。

効果的なオンボーディングは、入社前(内定期間)から始まり、入社後数ヶ月、あるいは1年間にわたって継続されるのが理想的です。中小企業では「入社したら現場で覚えろ」というOJT任せになりがちですが、計画的なオンボーディングを行うことで、若手の不安を軽減し、パフォーマンスを早期に引き出すことが可能です。

3-1-1. 入社初期の不安を解消するサポート体制(メンター制度、OJT)

入社したばかりの若手社員は、期待とともに大きな不安を抱えています。「会社のルールが分からない」「誰に何を聞けばいいのか」「職場の雰囲気に馴染めるか」といった戸惑いは、想像以上に大きなストレスとなります。この不安を解消するためのサポート体制は必須です。

  • メンター制度/バディ制度: 直属の上司とは別に、年次の近い先輩社員や、相談しやすい斜め上の先輩社員を「メンター」や「バディ」としてつけます。メンターは、業務の進め方だけでなく、社内の人間関係、キャリアの悩み、プライベートの相談まで、若手社員の「ナナメの関係」の相談役となります。例えば、日本のIT企業であるサイバーエージェント社では、メンター制度に加えて、メンターとは別に斜め上の先輩がつく「ナナメ制度」を導入し、部署を超えた人間関係の構築を支援しています。中小企業でも、まず1対1で担当を決めることから始められます。定期的にメンターと若手社員がランチや交流をできる機会を設けるだけでも効果があります。
  • 計画的なOJT: OJT(On-the-Job Training)は日本の多くの企業で行われていますが、その質にはばらつきがあります。「見て覚えろ」ではなく、具体的な育成計画に基づき、教える側(トレーナー)が若手社員のスキルレベルや理解度に合わせて丁寧に指導することが重要です。指導内容、期間、達成目標を明確にし、トレーナーにも育成担当としての評価やサポートを与えることで、OJTの質を高めることができます。チェックリスト形式で、習得すべきスキルや知識を可視化することも有効です。
  • 定期的な面談: 入社から1週間後、1ヶ月後、3ヶ月後といった節目で、人事担当者や直属の上司、メンターとの個別面談を実施します。ここでは、業務の進捗確認だけでなく、困っていること、不安に感じていること、会社への期待や要望などを率直に話せる場とします。特に、期待値ギャップがないか、人間関係で悩んでいないかなどを丁寧にヒアリングすることが重要です。

中小企業では専任の人事担当者がいない場合もありますが、社長自身や管理職、あるいは既存社員の中から育成に意欲のある人材を任命し、役割と責任を明確にするだけでも、若手社員の安心感は大きく向上します。

3-1-2. 短期目標設定と早期の成功体験

若手社員は「自分が会社に貢献できているか」を早期に実感したいと考えています。そのため、入社初期には達成可能な「短期目標」を設定し、小さな成功体験を積み重ねられるようにサポートすることが重要です。

例えば、

  • 入社1ヶ月で達成すべき業務目標(例:〇〇システムの基本操作を習得する、簡単なデータ入力を一人で完了させる)を設定する。
  • 3ヶ月後までに任せたい業務範囲や期待する役割を具体的に伝える。
  • 目標達成時には、上司や周囲が積極的に承認し、労いの言葉をかける。

早期に「できた!」という成功体験を得ることで、若手社員は自信を持ち、仕事へのモチベーションを高めます。「自分はここでやっていける」という感覚は、定着に強く結びつきます。大それた目標でなくて構いません。小さなステップを着実に上っていくための具体的な道筋を示すことが大切です。

3-2. 「育てる」ではなく「共に育つ」視点での人材育成・研修

若手社員は、成長機会がないと感じたときに離職を考える傾向が強いことは、前述の通りです。彼らは受け身で「育てられる」のを待っているのではなく、自ら学び、成長していきたいという意欲を持っています。企業は、その意欲を刺激し、成長を支援する環境を提供する必要があります。重要なのは、「会社が一方的に育成する」という考え方から、「会社と社員が共に成長していく」という視点に立つことです。

3-2-1. 若手が求める「学び」の機会提供(リスキリング支援)

現代は変化が激しく、常に新しい知識やスキルが求められる時代です。若手社員は、自身の市場価値を高めるためにも、新しい技術や知識を積極的に学びたいと考えています。企業は、こうした彼らの「学びたい」という欲求に応える必要があります。

  • 社内勉強会・研修: 社内のベテラン社員が持つ専門知識やノウハウを若手に継承するための勉強会は、コストを抑えつつ効果的な育成方法です。また、若手自身に興味のあるテーマについて調べさせ、社内向けに発表させる形式も、主体的な学びを促し、プレゼンテーション能力を高める上で有効です。
  • 外部研修・セミナー参加支援: 業務に関連する外部の専門研修やセミナーへの参加費用を補助したり、参加のための業務時間確保を認めたりします。中小企業向けの安価な研修プログラムや、自治体などが提供する支援制度も活用できます。
  • eラーニング・オンライン学習プラットフォームの活用: 場所や時間を選ばずに学習できるeラーニングは、中小企業にとって導入しやすいツールです。ビジネススキル、語学、ITスキルなど、幅広い分野のコンテンツを提供することで、若手社員の多様な学習ニーズに応えることができます。近年では、UdemyやCoursera、LinkedIn Learningといったグローバルなプラットフォームから、日本の企業向けサービスまで多様な選択肢があります。
  • 資格取得支援制度: 業務に関連する資格取得に向けた報奨金制度や、受験費用・テキスト代の補助は、若手社員の学習意欲を高めます。

重要なのは、ただ研修を提供するだけでなく、「なぜこのスキルが必要なのか」「これを学ぶことで、将来どのようなキャリアに繋がるのか」といった、学びの意義を本人に理解してもらうことです。

3-2-2. 個別キャリアプラン作成と実現に向けた支援

若手社員は、自身のキャリアについて真剣に考えています。しかし、漠然とした将来への不安を抱えていることも少なくありません。会社として、彼らが自身のキャリアパスを描けるよう支援し、その実現をサポートすることが、定着に大きく貢献します。

  • キャリア面談: 人事担当者や経験豊富な管理職が、若手社員と定期的にキャリアについて話し合う機会を設けます。本人の興味や強み、将来なりたい姿などを丁寧にヒアリングし、会社でどのような経験を積み、どのようなスキルを身につければ、そのキャリアに近づけるのかを一緒に考えます。
  • 社内公募制度/ジョブローテーション: 部署異動の希望を表明できる制度や、意図的に複数の部署で経験を積ませるジョブローテーションは、若手社員に多様な視点やスキルを身につけさせ、自身の適性を見つける機会を与えます。特に中小企業では、様々な業務に関わる機会が多いという特性を活かし、意欲のある若手に積極的に幅広い業務を任せることも有効です。
  • サクセッションプランとの連携: 将来のリーダー候補や専門職候補として期待する若手社員については、経営層や人事部門がそのキャリアパスを具体的に計画し、必要な経験や育成機会を意図的に与える「サクセッションプラン」の中に組み込んでいきます。これは、本人に長期的なキャリアの見通しを与えるだけでなく、会社からの期待を感じさせ、モチベーション向上に繋がります。

米国の人材マネジメントでは、社員のキャリア開発支援は企業の重要な責務と見なされており、WorkdayやSAP SuccessFactorsといったHRテクノロジーも、社員のキャリアプランニングやスキル管理機能を強化しています。中小企業でも、大がかりなシステムがなくとも、まずは年に一度、全社員とキャリアについて話し合う時間を設けることから始められます。

3-3. エンゲージメントを高める評価・フィードバックと1on1面談

若手社員が「自分の働きが認められている」「会社から期待されている」と感じることは、エンゲージメントと定着率に強く影響します。そのためには、納得度の高い評価制度と、質が高く頻繁なフィードバックが不可欠です。

3-3-1. 透明性の高い評価制度の構築

若手社員は、自分がどのような基準で評価されているのか、そしてなぜその評価になったのかを理解したいと考えています。評価基準が曖昧であったり、プロセスが不透明であったりすると、不公平感や不満が生じ、モチベーションが低下します。

  • 評価基準の明確化: 部署や役職ごとに、どのような成果や行動が評価されるのかを具体的に定めます。目標設定、達成度、プロセス、コンピテンシー(行動特性)など、多角的な視点での評価基準を設定することが望ましいです。中小企業でも、まずは人事評価シートの項目を具体的にすることから始められます。
  • 評価プロセスの透明化: 評価期間、評価者、評価方法、評価結果のフィードバック方法などを社員に周知します。評価結果だけでなく、なぜその評価になったのか、どのような点が良かったのか、改善すべき点は何かといった具体的な説明を行うことが重要です。
  • 多面評価(360度評価)の検討: 上司だけでなく、同僚や部下(いる場合)、顧客など、複数の視点から評価を行う多面評価は、評価の客観性を高め、社員の多角的な気づきを促します。中小企業では運用に手間がかかるため、まずは特定の部署やリーダー層を対象に試験的に導入したり、簡易的な形式で実施したりといった方法が考えられます。

評価制度は一度作ったら終わりではなく、定期的に見直し、社員の声を聞きながら改善していくプロセスが重要です。

3-3-2. 定期的な1on1面談による本音の対話と目標設定

上司と部下が1対1で行う「1on1面談」は、若手社員のエンゲージメントを高め、成長を支援するための強力なツールです。従来の「査定のための面談」とは異なり、部下の現状の課題や悩み、キャリアの希望、日々のモチベーションなどを気軽に話し合える「対話の場」として機能させます。

  • 実施頻度: 週に1回、または隔週に1回など、高い頻度で実施するのが効果的です。短時間(15分~30分程度)でも構いません。重要なのは、定期的に、途切れなく続けることです。
  • アジェンダ: 一方的な業務報告の場にせず、若手社員が話したいことを自由に話せる時間とします。最近うまくいったこと・困っていること、目標達成に向けた進捗や課題、体調やメンタル面の変化、プライベートの状況、キャリアに関する相談など、幅広いテーマを扱います。
  • 上司の役割: 上司は「指導する」というより、「聴く」姿勢を重視します。若手社員の話に耳を傾け、共感を示し、質問を通じて内省を促します。解決策をすぐに与えるのではなく、本人が自分で答えを見つけられるようサポートします。
  • 目標設定との連携: 1on1を通じて、若手社員の短期・長期の目標を一緒に設定・確認し、目標達成に向けた進捗をフォローします。目標に対するフィードバックをこまめに行うことで、成長を実感させることができます。

MicrosoftやGoogleといった先進企業は、全社的に1on1を強く推奨し、管理職向けに徹底した研修を行っています。これは、1on1が社員のエンゲージメント、生産性、そして定着率向上に不可欠であることをデータで実証しているからです。中小企業でも、まずは管理職層から1on1の重要性を理解し、スキルを習得するための研修を行うことから始めましょう。形だけの1on1にならないよう、目的意識を持って実施することが成功の鍵です。

3-4. 若手が「ここで働きたい」と思える組織風土・職場環境づくり

人間関係の悩みや職場の雰囲気は、若手社員の定着に大きく影響します。「心理的安全性が低い」と感じる職場では、彼らは萎縮し、能力を発揮できず、やがて離職を選びます。若手が安心して、活き活きと働ける組織風土・職場環境を創ることが重要です。

3-4-1. 心理的安全性を醸成するコミュニケーション改革

心理的安全性とは、「チームの中で、自分の考えや気持ちを、誰に対してでも安心して発言できる」状態を指します。これが高い組織では、活発な意見交換が行われ、新しいアイデアが生まれやすく、課題の早期発見にも繋がります。

心理的安全性を高めるためには、経営層や管理職の意識と行動が最も重要です。

  • 失敗を非難しない文化: 新しいことに挑戦した結果の失敗を、個人ではなく組織全体の学びとして捉え、非難しない姿勢を示します。
  • 多様な意見を歓迎する: 会議などで役職や年次に関わらず、誰もが自由に意見を言える雰囲気を作ります。若手社員の発言に対して、頭ごなしに否定せず、まずは耳を傾け、良い点を見つけて肯定的にフィードバックします。
  • オープンな情報共有: 経営状況や会社の課題について、隠さずに社員に共有します。透明性の高い情報共有は、社員の信頼感と当事者意識を高めます。
  • 傾聴と共感: 上司や先輩が、若手社員の話を丁寧に聴き、感情に寄り添う姿勢を見せることで、信頼関係が深まります。

Googleの有名な研究「Project Aristotle」でも、生産性の高いチームに最も影響を与える要素は「心理的安全性」であることが明らかになっています。中小企業でも、まずは経営層や管理職が「私たちは心理的安全性を重視します」というメッセージを明確に発信し、日々のコミュニケーションの中で実践していくことが第一歩です。

3-4-2. 多様な価値観を認め合うインクルーシブな文化

現代の若手社員は、生まれた環境も価値観も多様です。LGBTQ+への理解、ワークライフバランスの重視、副業への関心など、彼らが持つ多様なバックグラウンドや価値観を認め、尊重する文化があるかどうかも、定着に影響します。

  • ダイバーシティ&インクルージョンの推進: 性別、年齢、国籍、性的指向、障がいの有無などに関わらず、誰もが平等に扱われ、個性を活かせる環境を目指します。
  • ハラスメント対策の徹底: パワハラ、セクハラはもちろん、カスタマーハラスメントなど、あらゆるハラスメントを許容しないという強い姿勢を示し、相談しやすい窓口を設置・周知します。
  • 異なる意見や働き方への理解: 部署や役職が違えば、考え方や働き方も異なることを理解し、お互いを尊重する文化を醸成します。

中小企業では、多様な人材が集まることで組織が活性化し、新しいアイデアが生まれやすくなります。異なる価値観を認め合う「インクルーシブな」文化は、若手だけでなく、全ての社員にとって働きやすい環境を作り出し、エンゲージメントを高めます。

3-5. 働きがいと健康経営を両立する柔軟な働き方

若手社員は、仕事だけでなく、プライベートの時間や自身の健康も大切にしたいと考えています。柔軟な働き方を可能にし、心身の健康をサポートする「健康経営」の実践は、彼らのワークライフバランスへのニーズに応え、長期的な定着に繋がります。

3-5-1. 働き方改革によるワークライフバランス支援

  • 柔軟な勤務制度: コアタイムなしのフレックスタイム制度、リモートワーク・テレワーク制度、短時間勤務制度など、業務内容や社員のライフスタイルに合わせて多様な働き方を選択できるようにします。全ての業務で全面的に導入するのが難しくても、週に数日だけリモートワークを認める、特定の職種でフレックスを導入するなど、部分的な導入から始めることが可能です。
  • 休暇制度の充実と取得推奨: 法定の有給休暇に加え、リフレッシュ休暇や慶弔休暇などの特別休暇制度を設けます。また、「休暇を取りにくい雰囲気」をなくし、有給休暇の計画的付与や、長期休暇の取得奨励など、積極的に休暇を取れるような働きかけを行います。
  • 残業時間の削減: 業務効率化や人員配置の見直しにより、慢性的な長時間労働を是正します。定時退社を奨励する雰囲気作りも重要です。

柔軟な働き方やワークライフバランスの充実は、単に社員の満足度を高めるだけでなく、生産性向上や創造性の向上にも繋がります。特に、介護や育児といったライフイベントを迎える社員にとっても、働き続けやすい環境となり、長期的な視点での人材確保に貢献します。

3-5-2. 心身の健康をサポートする健康経営の実践

社員の健康は、企業にとって最も重要な資産です。心身ともに健康でなければ、高いパフォーマンスを発揮することはできません。健康経営とは、単に社員の健康診断を実施するだけでなく、企業が主体となって社員の健康増進に取り組むことで、生産性向上や企業イメージ向上を目指す経営手法です。経済産業省が推進する「健康経営優良法人」認定制度も、中小企業が取り組みやすいよう、規模に応じた認定基準を設けています。

  • 定期健康診断の徹底: 義務付けられている健康診断の受診率100%を目指します。
  • ストレスチェックの実施と活用: 義務付けられているストレスチェックを実施し、個人の高ストレス者への対応だけでなく、組織全体の集団分析結果を職場環境改善に活かします。
  • 産業医・保健師によるサポート体制: 専属の産業医や保健師を置くのが難しくても、地域の医師会や産業保健総合支援センターなどが提供するサービスを利用し、社員が気軽に健康相談やメンタルヘルス相談ができる体制を整えます。
  • 長時間労働の是正: 法定労働時間の遵守はもちろん、サービス残業をなくし、休憩時間をしっかり取ることを奨励します。
  • 健康増進施策: 社内での運動機会の提供(ストレッチ時間、運動器具設置など)、健康的な食生活の推奨(ヘルシーメニューの補助など)、禁煙支援など、社員の健康習慣をサポートする取り組みを行います。
  • メンタルヘルスケア: ストレスチェックの結果に基づいたフォロー、外部相談窓口の紹介、ラインケア研修(管理職向けメンタルヘルス研修)の実施など、メンタル不調を未然に防ぎ、早期発見・早期対応できる体制を強化します。

健康経営は、社員の健康を守るだけでなく、休職率・離職率の低下、プレゼンティーイズム(心身の不調を抱えながら業務を行うことによる生産性低下)の改善、そして企業のブランディング向上にも繋がります。SHRM(米国人材マネジメント協会)をはじめ、グローバルに見ても社員のウェルビーイングは重要な経営課題と認識されており、多くの企業が投資を強化しています。中小企業でも、まずは「健康経営宣言」を出すことから始め、社員の健康に対する意識を高め、小さな施策から継続的に取り組むことが重要です。


このセッションでは、若手人材の定着率向上に繋がる具体的な施策を幅広くご紹介しました。オンボーディングの強化から、成長支援、評価・フィードバックの改善、心理的安全性の高い組織づくり、そして柔軟な働き方と健康経営の実践まで、これらは単独で実施するよりも、組み合わせて包括的に取り組むことで、より大きな効果を発揮します。

「全てを一度にやるのは難しい…」と感じたかもしれません。しかし、重要なのは完璧を目指すことではなく、まずは「何から始めるか」を決めることです。貴社の現状を分析し、若手社員の声を丁寧に聞きながら、最も効果的だと思われる施策からスモールスタートで始めてみてください。

これらの施策は、単に若手社員のためだけでなく、全ての社員のエンゲージメントと働きがいを高め、結果として組織全体の活性化と生産性向上に繋がります。そして、これはまさに、次に掘り下げる「人的資本経営」の考え方そのものに繋がっていきます。

次のセッションでは、若手人材への投資を「コスト」ではなく「未来への資産」と捉える「人的資本経営」の視点から、これらの取り組みの意義と、経営層が果たすべき役割について詳しく見ていきましょう。